「看護師・保健師・助産師、3つとも取っておいたほうがいいのでしょうか」

看護大学に進む方、これから進路を選ぶ方から、よく聞かれる質問です。

私は3つとも持っています。そして今、実際に使っているのは看護師の免許だけです。助産師として働いた時期も、保健師として企業で働いた時期もありましたが、現在は訪問看護師として働いています。

その立場から、正直にお答えします。

✅ 30秒でわかる結論
迷っていること答え
3つ取ると就職に有利?応募できる求人は増えます。ただし採用の決め手は経験と伝え方でした
給料は上がる?ほとんど変わりません。保健師と看護師の平均年収はほぼ同額です
取らないと後悔する?あとからでも取れます。働いてから決めても遅くありません
使わなかったら無駄?無駄になりません。免許は失効せず、合わないと分かったことも結果です

「なんとなく有利そうだから」という理由だけなら、無理に3つ取る必要はありません。ただし、進む道を変えたくなったときの選択肢は確実に増えます。


この記事でわかること

  • 私が3つ取った理由(もともとは看護師だけでいいと思っていました)
  • 3つ取るべき人・取らなくていい人の判断のしかた
  • 3職種の年収・合格率・必要な期間(最新データ)
  • 実際に「取っておいてよかった」と思った場面と、そうでもなかった場面
  • 使っていない資格をどう考えるか
  • 2026年時点での取り方(制度が変わっています)

私が3つ取った理由|「看護師だけでいい」と思っていました

先に、私自身の話をします。

大学に入った頃は、「看護師の資格だけ取れればいい」と考えていました。3つ取ろうなんて、まったく思っていませんでした。

気持ちが変わったのは、こう考えたからです。

🙋 取ると決めたときの考え

将来やりたいことに、もしかしたら保健師も助産師も必要になるかもしれない。

今、目の前に資格を取れる環境がある。新しい経験も積める。それなら挑戦しよう——そう思いました。

学費が増えなかったことも、大きな理由でした

もう一つ、現実的な理由があります。

私の場合、助産師も保健師も、カリキュラムを追加で受けても学費が増えませんでした。同じ学費で学べる範囲が広がるなら、学業を修めるという意味ではお得だと考えたのです。

⚠️ 学費は学校によって違います

追加の学費がかからない学校もあれば、課程ごとに実習費などが別途かかる学校もあります。金額は学校によって大きく違うので、必ず志望校の学費表を確認してください。

「同じ学費で取れるなら取る」という判断は、そこを確認したうえで成り立ちます。

つまり私は、「絶対に3つ必要だ」と思って取ったわけではありません。取れる環境があったから、可能性を残しておこうと考えた——それだけです。

この距離感が、あとで効いてきました。使わない資格が出ても、「もったいない」と思わずに済んだからです。


まず、あなたはどのタイプ?

現実1こんな方は、取る価値があります
  • やりたい分野がはっきりしている(産業保健をやりたい、地域の母子支援をやりたい など)
  • その資格がないと応募できない求人を目指している
  • 学ぶ内容そのものに興味がある

資格がないと応募できない主な仕事

資格その資格がないとできない仕事の例
助産師分娩の介助、助産院の開業
保健師行政保健師(自治体)、特定保健指導の実施者、「産業保健師」の名称での採用

※企業で働く場合は、看護師免許だけで応募できる「企業看護師」「産業看護師」の求人もあります。

現実2こんな方は、急いで取らなくて大丈夫です
  • 「なんとなく持っていたほうが有利そう」という理由しかない
  • 実習と国家試験が重なることに、体力的な不安がある
  • まだやりたい分野が決まっていない

あとから取る道も残っています。看護師として働いてから決めても遅くありません。


データで見る3職種の違い(年収・合格率・人数)

年収は「助産師 → 保健師 ≒ 看護師」の順

職種平均年収
助産師約581万円
保健師約521万円
看護師約520万円

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとにした集計値です。

ここで注意してほしいのは、保健師と看護師はほぼ同じという点です。「保健師を取れば給料が上がる」とは言えません。助産師が高いのは、夜勤や分娩手当がある職場が多いためと考えられます。

つまり、資格の数で収入が決まるわけではありません。収入に効くのは、働く分野と雇用形態です。

⚠️ この数字を見るときの注意

平均年収は、職種ごとに平均年齢や勤務形態が違うため、単純に比べられません。助産師が高いのは、夜勤・分娩手当のある職場が多いことが影響していると考えられます。

「保健師になれば年収が上がる」と考えて進むと、実際の求人を見たときにギャップを感じます。私が未経験で産業保健師になったときは、夜勤込みの年収約500万円から、約370万円に下がりました。

国家試験の合格率は、3つとも高い

試験(2026年実施)合格率
看護師(第115回)88.3%(新卒94.1%)
保健師(第112回)87.1%
助産師(第109回)99.7%(新卒99.8%)

合格率だけを見ると、どれも高い数字です。ただし、難しいのは試験そのものより、同じ年に重なることです。

  • 3つの実習を、4年間の中に詰め込むことになります
  • 国家試験は同じ週に3つ受験します(2026年は助産師2月12日、保健師2月13日、看護師2月15日)
  • 就職活動も並行します

「合格率が高いから大丈夫」ではなく、その年をどう乗り切るかで考えてください。

資格を持っている人の数

職種就業者数(令和6年末)
看護師約136万人
保健師約6.4万人
助産師約3.9万人

出典:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)」

保健師・助産師は、看護師に比べてとても少数です。この「人数の少なさ」が、あとで効いてくる場面があります(次の章)。


3免許が役に立った4つの場面(実体験)

① 産業保健師の求人に応募できた

私は33歳で、未経験から産業保健師に転職しました。30社以上に応募し、8ヶ月かかりました。

面接に進めたのは、保健師の免許があったからだと思っています。看護師免許だけで応募できる「企業看護師」の求人もありますが、応募できる求人の数が変わります。

→ 詳しくは産業保健師に未経験・33歳から転職した話

② 応援ナースで、紹介される案件の幅が広がった

応援ナース(短期の派遣で働く働き方)で仕事を探したとき、助産師・保健師の資格を伝えたところ、紹介される案件の幅が広がりました。

ただし、実際にどの業務を選ぶかは自分次第です。「資格があるから必ず良い条件になる」わけではありません。

③ 第一種衛生管理者を、試験なしで取得できた

保健師免許があると、第一種衛生管理者の免許を、試験を受けずに申請だけで取得できます(労働局への申請)。企業の求人では歓迎条件に入っていることもあります。

私は「将来、制度が変わるかもしれない」と考えて、すぐに申請しました。

④ 海外で働く選択肢も、資格によって変わる

JICA海外協力隊のような海外ボランティアでは、職種が「看護師」「保健師」「助産師」に分かれています。

2026年春募集の要請数と、資格を持っている人の数を並べると、こうなります。

職種要請数就業者数
看護師20件約136万人
保健師15件約6.4万人
助産師20件約3.9万人

募集の数は同じくらいなのに、応募しうる人の数がまったく違います。単純計算では、助産師は看護師の35分の1の人数で同じ枠を分け合うことになります。

「助産師のほうが挑戦しやすそう」という私の印象は、この差から来ていたのだと思います。

📝 ただし、実務経験は必要です
JICA海外協力隊は、どの職種も実務経験3年以上が目安とされています(募集回や要請内容によって異なります)。資格だけでは応募できない案件が多いため、最新の募集要項をご確認ください。

正直に言うと、「3つあってよかった」と毎日思うわけではありません

ここは、はっきりお伝えします。

3つ持っているから仕事がうまくいく、ということはありません。給料が3倍になるわけでもなく、現場で求められるのは、そのとき担っている役割の力です。

「トリプルライセンス」と言われると聞こえはいいのですが、持っていること自体が強みになる場面は、思っているより多くありません。

それでも意味があったと思うこと

大きかったのは、資格を取るまでの期間に学んだことです。

助産師の課程で学んだ女性の身体と心のこと。保健師の課程で学んだ、地域と予防の視点。これらは、産業保健師として働いたときにも、今の訪問看護の仕事にも生きています。

免許そのものより、そこへ至る学びのほうが、私には価値がありました。


使っていない資格を、どう考えているか

私は今、助産師として分娩の現場に戻る予定はありません。理由は2つです。

  • 不規則な生活になりやすいこと
  • 責任の重さから、ストレスを抱えやすいこと

「せっかく取ったのに、もったいない」と言われることもあります。でも、そうは思っていません。

🙋 資格は、生き方に合わせて選び直していい

自分の生き方に合った選択肢を選べばいいと思っています。

とりあえず挑戦してみて、合わなければ別の資格を使ってみればいい。人生は長いので、やりたいと思ったことをすればいいです。

そして、3つとも使わないという選択肢もあります。

看護師・保健師・助産師の免許に更新制度はありません。使っていなくても失効しません。「今は使っていないけれど、5年後に使うかもしれない」——そのくらいの距離感で持っておけば十分です。


【2026年版】3つの免許の取り方

私は4年制の看護大学で3つとも取りました。ただし、これから目指す方の状況は当時と変わっています。

学ぶ量が増えています

保健師・助産師の教育には、2回の大きな変更がありました。

時期変わったこと
2010年4月〜修業年限が「6か月以上」から「1年以上」に(2009年の法改正)
2022年度の入学者〜学ぶ単位数が増加(下の表)
改正前現在
保健師の教育23単位以上28単位以上
助産師の教育28単位以上31単位以上

つまり、昔より「ついでに取る」のが難しくなっています。4年間で3つ取れる大学は今もありますが、助産師の課程には定員が設けられているのが一般的です。希望者が定員を超えた年は、学内で選考が行われます。

取り方は主に3つ

ルート内容特徴
① 4年制大学で選択看護師課程に加えて、保健師または助産師の課程を選ぶ助産師は定員があり、希望者が多い年は選考がある
② 卒業後に進学助産師学校・保健師の専攻科などへ1年以上通う学費と時間はかかるが、集中して学べる
③ 大学院修士課程で受験資格を得る研究や教育も視野に入れる方向け

学ぶ内容が増えたぶん、「4年間で3つまとめて」が難しくなっている学校もあります。志望校の募集要項で、どの課程が選べるかを必ず確認してください。

在学中に3つの国家試験を受ける場合の勉強の進め方は、看護師・保健師・助産師の国試を3つ同時受験した話に書きました。私が勉強を始めたのは11月末でした。

働きながら取る場合の費用や期間は、看護師が保健師免許を社会人から取る方法にまとめています。


よくある質問

Q1. 3つ持っていると、就職に有利ですか?

「応募できる求人が増える」という意味では有利です。ただし、採用の決め手になるのは経験と伝え方でした。私は30社以上に応募して8ヶ月かかっています。資格があるだけで通るわけではありません。

Q2. 給料は上がりますか?

資格手当がつく職場はありますが、多くは数千円程度です。平均年収を見ても、保健師と看護師はほぼ同じでした。資格の数より、働く分野と雇用形態のほうが収入に効きます。

Q3. 保健師と助産師、どちらを選べばいいですか?

働き方や収入より先に、自分がどんな役割の仕事に就きたいのかを考えてみてください。赤ちゃんが生まれる場に立ち会って分娩介助をしたいのか。それとも、地域や職場で暮らす人を包括的に見て、病気になる前から支えたいのか。ここがはっきりすると、答えは自然に決まってきます。

もちろん、収入や生活リズムで選ぶのも一つの考え方です(保健師は日勤中心・土日休みの職場が多く、助産師は夜勤を含む交代制が中心。年収は助産師のほうが高い傾向にあります)。ただ、条件だけで選ぶと、仕事の中身が自分に合わなかったときに続きません。まずやりたい役割から考えて、条件はそのあとで比べる。この順番をおすすめします。

Q4. 働きながら取れますか?

教育期間が1年以上必要なため、フルタイムで働きながらの取得は簡単ではありません。パートや夜勤専従に切り替えて通う方が多いです。

Q5. 3つ取ると、学費は高くなりますか?

学校によって違います。私の場合は、保健師・助産師の課程を追加しても学費は増えませんでした。一方で、課程ごとに実習費などが別途かかる学校もあります。志望校の学費表で必ず確認してください。追加費用がかからないなら、「取れるうちに取る」という判断はしやすくなります。

Q6. 取ったけれど使っていません。無駄でしたか?

無駄ではありません。合わなかったと分かったこと自体が結果です。免許は失効しないので、使いたくなったときに使えます。


迷っている方へ|今日からできる3つのこと

  1. 志望校(または進学先)の募集要項を見る:どの課程が選べるか、選抜があるかを確認します
  2. その資格でしかできない仕事を1つ挙げてみる:挙げられないなら、今は急がなくて大丈夫です
  3. 看護師として働いている自分を想像してみる:土台は看護師資格です。そこから考えると、順番が見えてきます

まとめ|資格は「持ち方」より「使い方」

  • 「なんとなく有利そう」で3つ取る必要はありません
  • 取る価値があるのは、やりたい分野が決まっている方、または学ぶ内容そのものに興味がある方
  • 3つ持っていても、それだけで収入や採用が有利になるわけではありません
  • ただし、進む道を変えるときに、資格を取り直さずに済みます
  • 使わない資格があってもいい。合わなければ、別の道を選べます

まっすぐじゃなくていい。資格も、キャリアも、あとから選び直せます。


出典・参考(最終確認日:2026年9月24日)

  • 平均年収:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとにした集計(助産師 約580.6万円/保健師 約521.2万円/看護師 約519.7万円)。職種ごとに平均年齢が異なるため、単純な比較はできません
  • 国家試験の日程・合格率:厚生労働省発表(試験日=助産師2026年2月12日/保健師2月13日/看護師2月15日、合格発表2026年3月24日)。第115回看護師国家試験 88.3%(新卒94.1%)/第112回保健師国家試験 87.1%(受験者7,467人・合格者6,502人)/第109回助産師国家試験 99.7%(受験者2,046人・合格者2,040人/新卒99.8%)
  • 就業者数:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)」(令和6年末)。看護師 1,363,142人/保健師 63,536人/助産師 38,721人
  • 修業年限:保健師助産師看護師法の一部改正(2009年7月15日公布・法律第78号、2010年4月施行)により、保健師・助産師の修業年限が「6月以上」から「1年以上」に
  • 単位数:厚生労働省・文部科学省「保健師助産師看護師学校養成所指定規則の一部を改正する省令の公布について(通知)」(2020年10月30日公布、2022年度入学者から適用)。保健師28単位以上・助産師31単位以上
  • 海外ボランティア:JICA海外協力隊「要請情報」(2026年春募集・一般案件/看護師・保健師・助産師)
  • 第一種衛生管理者:保健師免許保持者は試験免除で免許申請が可能(都道府県労働局へ申請)

※制度・統計・募集内容は変更されることがあります。進路や応募を検討する際は、必ず各公式サイトで最新情報をご確認ください。