「看護師のオーストラリアワーホリって、本当のところどうなんだろう」——そう調べているあなたへ。今日も忙しい病棟でシフトをこなしながら、心のどこかで海外への憧れを抱えていませんか。
看護師免許を持って海外に行けたらいいな…でも仕事を辞めてまで行く勇気が出なくて。英語もできないし、現地で本当に働けるの? お金はどのくらいかかるの?
その迷い、よくわかります。私も病棟で働きながら何年もそう思い続けて、「行く」と決めるまでにかなりの時間がかかりました。でも実際にオーストラリアへワーホリに行ってみて、帰国した今、「行ってよかった」と心から思っています。
この記事では、看護師として働いていた私が実際にオーストラリアへワーキングホリデーに行き、Certificate III in Individual Support(Ageing)という介護の資格を現地で取得して、高齢者施設と在宅ケアの現場で働いた経験を、準備・費用・仕事内容・帰国後の転職活動までリアルにお伝えします。
「看護師のオーストラリアワーホリは本当のところいくらかかるの?」「英語がまったく話せなくても現地で働ける?」「帰国後の転職活動でブランクは不利?」——そんな具体的な疑問にも、私の実体験ベースで一つずつ答えていきます。「行きたい気持ちはあるけど踏み出せない」という方の背中を、少しでも押せたら嬉しいです。
この記事でわかること
- 看護師がオーストラリアワーホリに行くまでの準備ステップ(ビザ・保険・資金)
- 渡航・生活・Certificate III取得にかかるリアルな費用総額
- Certificate III in Individual Support(Ageing)の取得方法と英語ゼロでの学習体験
- 高齢者施設・在宅ケア(訪問介護)の現場で実際に経験したこと
- ワーホリから帰国後の看護師の転職活動を成功させるコツ
なぜ看護師がオーストラリアワーホリを選んだのか

これは現地で何度も訪れたシドニー・オペラハウスです。「ここで1年暮らすんだ」と渡航直後に眺めた景色は、今も鮮明に覚えています。
病棟で看護師として働いていた私が「オーストラリアでワーホリをしよう」と決めた理由は、一言では説明しにくいです。強い夢や明確なビジョンがあったわけではなく、「このまま同じ場所で同じことを続けていて、いいのだろうか」という漠然とした焦りがきっかけでした。
病棟の仕事は好きでしたし、職場の人間関係にも恵まれていました。でも、「看護師=病棟」という枠の中だけで自分のキャリアを考えていることに、どこかで息苦しさを感じていたんです。
そのころ、同僚の主任が30代でオーストラリアの看護大学に入学し、異国の地で学生として挑戦した話を聞く機会がありました。「英語がほとんど話せなくても実践のなかで鍛え、卒業までたどり着いた」「英語が完璧でなくても、日本で看護師として働いた経験を活かせた」——その言葉が、ずっと頭に残っていました。
思い切って調べ始めると、3つのことがわかってきました。
- ワーホリビザの申請ハードルは、思っていたより高くない
- 現地で介護の資格(Certificate III)を取ることができる
- 資格さえあれば、英語が完璧でなくても高齢者施設や在宅ケアで働ける
学生時代に恩師がかけてくれた「看護は世界共通。手と目で相手を見て、その人の生活に合わせて看護を提供することが本質。あなたたちが得た知識と技術は、日本だけでなく世界で通用する」という言葉も思い出しました。
そして、「看護師免許を活かした経験を持ったまま、介護という形で現地の人の生活に関わることができる」——それが、私がオーストラリアを選んだ最大の理由でした。
「完璧な準備が整ってから動こう」と思っていたら、ビザの年齢制限が来ていたかもしれません。「行けるかどうか」より「行きたいかどうか」で考えたとき、答えはもう出ていました。
オーストラリアワーホリの準備|ビザ申請から出発まで
ワーキングホリデービザ(WHV)の概要
オーストラリアのワーキングホリデービザ(サブクラス417)は、日本国籍を持つ18〜30歳(申請時点)の方が取得できるビザです。最長1年間オーストラリアに滞在しながら就労・就学ができます。
2年目・3年目への延長制度もあります。1年目に「指定地域での指定労働(specified work)」を3ヶ月(88日相当)行うことで2年目(セカンドワーホリ)の取得が可能になり、2年目中にさらに6ヶ月の指定労働を行うことで3年目(サードワーホリ)の申請ができます。指定労働には農業・観光業のほか、地域によっては高齢者介護も含まれることがあるといわれています。詳細はオーストラリア内務省の公式サイトで最新条件を確認してください。
申請は基本的にオンラインで完結します。申請から許可が下りるまでは数日〜数週間程度であることが多いです。申請費用はオーストラリアドル建てで、為替や政府の改定により変動します(近年は緩やかに値上がりする傾向にあるといわれています)。
31歳以上だと取れないんですか?
申請時点で30歳以下であることが条件です。31歳になる前に申請を済ませておければOKです。私はコロナ禍も経ていたため、結局ワーホリビザ申請が30歳、渡航が31歳でした。渡航のタイミングはあとから調整できるので、「行くかどうか迷っている」段階でも、まずビザだけ申請しておくという方法もあります。年齢が迫っている方は特に早めに確認してみてください。
出発前の準備ステップ
私が渡航前に準備したことをまとめると、大きく以下のステップになります。働きながら準備を進める方が多いと思いますので、最初に「自分で手配するか/エージェントを利用するか」を決めておくと、その後の段取りがぐっとスムーズになります。
STEP1:自分で手配するか、エージェントを利用するかを決める
最初の分岐点が、ここです。どちらを選ぶかによって、その後のRTO選び・ビザ申請・現地生活の準備にかかる時間と労力が大きく変わります。働きながら準備を進められるかどうかも、この選択次第です。
自分で全部手配する場合
- 費用を抑えられる(仲介手数料がかからない)
- 自分のペースで比較・検討できる
- ただし、英語での問い合わせ・契約手続き・現地調整がすべて自己責任
看護留学エージェントを利用する場合
- RTO選び・申込手続き・現地サポートをまとめて代行してもらえる
- 日本語でのカウンセリングが受けられる
- 渡航前から帰国後まで一貫したサポートが受けられる
- ただし、サポート費用は別途発生(プランによる)
私は「ワールドアベニュー」という看護師・医療従事者向け留学を専門に扱うエージェントを利用しました。看護師向けのプログラム(Certificate III取得+現地就労支援)が整っていたことと、日本語で相談できる安心感が決め手でした。英語に自信がない方・初めての海外渡航で不安が大きい方・現地の情報を得る手段が限られている方には、エージェント活用は一つの選択肢になると思います。
エージェントを利用すると本気度が薄れて、留学やワーホリで身につくはずの「生活力」や「英語力」が育たないと聞きます。エージェントを使うのは良くないことなのでしょうか?
そんなことはありません。エージェントを活用しても、本人の目的意識次第で経験の深さは大きく変わります。「すべて任せきり」になれば確かに目的意識は薄れますが、「なぜ渡航したいのか」「現地で何を得たいのか」を自分の軸として持っていれば、その不安は自然と小さくなります。ワーホリや留学をしようと決心した時点で、あなたはすでに行動できる人。困難があっても乗り越えられる力を持っていますよ。
STEP2:渡航・生活資金の確保
現地の物価や生活コストを計算し、必要な貯金額を割り出して貯蓄を始めましょう。最低でも渡航後3〜6ヶ月分の生活費を確保しておくのが安心です。現地での就労が始まるまでのつなぎ期間が必ずあるためです。この資金計画が、現地での精神的な余裕につながります。
STEP3:パスポートの確認・取得
ビザの有効期間中、パスポートが有効であることが必要です。期限が近い場合は早めに更新しておきましょう。
STEP4:ワーホリビザの申請
オーストラリア内務省(Department of Home Affairs)の公式オンラインポータル(ImmiAccount)から申請できます。必要なものはパスポート・顔写真・クレジットカードが基本です。
STEP5:海外旅行保険への加入
オーストラリアは医療費が非常に高額なため、海外保険は必須です。医療・救急搬送・傷害をカバーするプランを選びましょう。日本の海外旅行保険を1年契約で加入する方法のほか、オーストラリア国内のOVHC(Overseas Visitor Health Cover)に加入する選択肢もあります。年間で数万〜十数万円程度が一般的です。
STEP6:語学学校・RTOの事前リサーチ
Certificate IIIを取る場合、RTO(登録訓練機関)を事前にリサーチしておきましょう。エージェントを利用する場合はカウンセリングのなかで提案を受けられます。自分で手配する場合は、コース内容・期間・費用・立地を比較して選びましょう。
STEP7:現地の銀行口座開設準備
Commbank(Commonwealth Bank)など、日本にいる間に口座開設手続きができる銀行もあります。就労してから給与を受け取るためにも、口座開設は早めに着手しておきましょう。
看護師のオーストラリアワーホリ費用|総額いくらかかる?
「ワーホリっていくらかかるの?」という質問はとても多いです。私の実体験をもとに費用感を正直にお伝えします。あくまでも私の場合の目安ですので、渡航先の地域・生活スタイル・滞在期間によって変わります。
主な費用の内訳(2026年最新版)
ここ数年、オーストラリアは世界的なインフレと家賃高騰の影響で生活コストが大幅に上昇しています。私が渡航した当時の感覚で計算すると痛い目に遭うので、2026年時点の最新相場でまとめ直しました。
| 項目 | 目安(日本円換算・2026年現在) |
|---|---|
| ワーホリビザ申請費 | 約7〜8万円(AUD 670) |
| 航空券(往復) | 約15〜30万円(時期で大きく変動) |
| 海外保険(1年) | 約20〜30万円(日本の保険会社) |
| 語学学校(1〜2ヶ月) | 約25〜50万円(授業料+滞在費含む) |
| Certificate III取得費 | 約30〜50万円(RTO・補助制度で変動) |
| 生活費(家賃・食費など)×12ヶ月 | 約180〜280万円(都市部は高め) |
| 合計(目安) | 約250〜450万円 |
※為替レートは1豪ドル=約100〜110円で換算しています。最新の為替動向によって日本円換算額は変動します。
幅が大きいのは、住む場所・生活スタイル・どの時期に語学学校に通うかによって大きく変わるからです。とくにシドニー・メルボルンの家賃は2022年以降に急騰しており、シェアハウスのオウンルーム(個室)でも週AUD 300〜450(月12〜18万円相当)が今の相場といわれています。ブリスベン・ゴールドコースト・パース・アデレードなどの地方都市を選べば、家賃を2〜4割ほど抑えられます。
私が渡航した当時はもう少し安く済みましたが、今から準備する方は「最低でも300万円、余裕を見て400万円」を目安に資金計画を立てておくと安心です。
私はルームシェアも検討しましたが、仕事がモーニングシフトやアフタヌーンシフトの不規則勤務だったため、生活リズムが合わずに迷惑をかけたくないと考え、オウンルーム(個室)を選びました。価格をさらに抑えたい場合は、ルームシェア(同じ部屋を複数人でシェア)を検討すると良いでしょう。
Certificate III取得費について
Certificate III in Individual Support(Ageing)の取得費は、RTO(登録訓練機関)によって大きく異なります。オーストラリアには州によって補助金制度(Skills Assure ProviderやJobTrainer等)が用意されていることもあり、対象になれば実費が安くなるケースもあります。最新の補助制度は州政府の公式サイトで確認できます。
エージェント経由で申し込む場合は、コース費・教材費・実習関連費・サポート費がパッケージ化されていることが多いです。料金体系はエージェント・コース・期間で大きく変わるため、無料カウンセリングで見積もりを取って比較するのがおすすめです。
看護留学エージェントを利用した私の体験
私の場合、ワールドアベニューの看護留学プログラムを通じて、以下の流れで現地に渡りました。
- 日本国内で無料カウンセリング(オンライン・対面)
- 看護師向けパッケージプランの提案を受ける(私はシドニーで開講されているコースを選びました)
- ビザ申請・語学学校・Certificate IIIコースの手続きを並行して進める
- 渡航前オリエンテーションで現地生活の準備をサポートしてもらう
- 渡航後も日本語でのトラブル相談窓口を利用可能
渡航前には、エージェント経由のオンライン英語レッスンも数ヶ月間受講していました。完璧ではないですが、出発前に「英語に触れる時間」を作っておけたことは現地での適応にプラスに働いたと感じます。
正直に言うと、自分でゼロから手配する場合に比べて費用は上がりました。ただ、英語で全ての契約書を読み込んで判断する自信がなかった当時の私にとって、「日本語で相談できる窓口があること」「現地でつまずいたときに頼れる先があること」は、お金には代えがたい価値がありました。
逆に「英語にある程度自信があり、自分で調べて動ける方」は、エージェントを使わずに費用を抑える方法も十分アリだと思います。現地の高齢者施設で出会った日本人スタッフのなかには、極力費用を抑えて留学を実現していた方もいました。判断軸は、英語力・行動力・初めての長期海外滞在かどうか、の3点で考えると良いです。
Certificate III in Individual Support(Ageing)とは?|オーストラリアの介護資格
この資格の概要
Certificate III in Individual Support(コード:CHC33021)は、オーストラリアで介護・支援の現場で働くために必要な資格です。専攻として「Ageing(高齢者ケア)」「Disability(障害者支援)」「Home and Community(在宅・地域ケア)」の3つのコースが選べます。日本の介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)に近いポジションですが、内容はすべて英語で行われ、実習も現地の施設で受けます。
なお、現行コード「CHC33021」は2021年以降の改訂版で、それ以前の取得者は旧コード「CHC33015」です。両者の取得者ともに現場で就労可能と公的に整理されているといわれています。
資格取得までの流れは大きく以下のとおりです。
- RTO(登録訓練機関)に入学
- 座学(ユニットと呼ばれる単元ごとに学習・レポート提出)
- 実習(Placement)→ 施設や在宅ケア先で実際に支援業務を体験
- 全ユニット修了・実習時間のクリア → 資格取得
コースの期間はRTOによって異なりますが、3〜6ヶ月程度が一般的です。

ユニットごとにこのような分厚いワークブックが配布され、設問に英語で回答していく形式でした。1冊終えるごとに「やりきった」感がありました。
学習内容
主な学習ユニットは以下のようなものです。
- 個人の尊厳・権利の尊重(Dignity and Rights)
- 感染予防と職場安全(Work Health and Safety)
- 食事介助と栄養サポート
- 移乗・移動の介助(ボディメカニクスの理解)
- 認知症ケアの基礎
- コミュニケーションとチームワーク
- 法令・倫理・守秘義務

授業のホワイトボードは毎回こんな雰囲気でした。上にクラスルール(「ゴミは持ち帰る」「授業中のスマホ禁止」「他人を尊重する」など)、下に当日の学習ポイント(Load・Duration・Techniques・Equipment……など移乗介助の基本要素)が並んでいて、私はノートとスマホで写真を撮って復習していました。
英語での学習は実際に大変だった

実技の授業ではマネキンを使って体位変換や移乗介助、緊急時対応などを練習しました。スライドには「コース修了後にこういう仕事に就けますよ」というキャリア例(Care worker、Personal care assistant、Disability service worker など)が並んでいて、「ここを乗り越えたら現場に出られるんだ」とモチベーションになっていました。
正直に言います。授業は英語、テキストも英語、提出するレポートも英語です。最初の数週間は「これ、本当に終わるのか」と何度も不安になりました。
それでも何とかなったのは、同じクラスに英語が得意でない留学生が多くいて、みんなで助け合いながら進めていたから。それと、介護の内容そのものは看護師として働いてきた経験と重なる部分が多く、「何を意味しているか」は推測できる場面が多かったことも助かりました。
わからない英語は翻訳アプリを使いながら、クラスメートに聞きながら、とにかく諦めずに進みました。「完璧に理解してから次へ」ではなく「わからなくても前に進む」という感覚で乗り越えた記憶があります。
オーストラリアの高齢者施設・在宅ケアの現場|英語ゼロから働いた実体験
Certificate IIIを取得した後、私は高齢者施設(Aged Care Facility)と在宅ケア(Home Care)の両方で働きました。
高齢者施設での仕事
施設での主な業務は、入居者の方の身の回りのサポートです。
- 起床・就寝の介助
- 入浴・洗面・更衣の介助
- 食事介助・水分補給のサポート
- トイレ介助・失禁ケア
- レクリエーション活動への参加サポート
- バイタルサイン測定(施設による)
- 記録・申し送り
日本の介護施設と似た業務が多いのですが、違いを強く感じたのは「個人の選択肢の尊重」という文化でした。たとえば、着る服・食事の量・入浴の頻度など、入居者本人が「こうしたい」と言えば、それを最大限に尊重する空気がありました。
日本では「安全管理のため」「衛生のため」という理由で職員が決めてしまいがちな場面でも、オーストラリアの現場では「ご本人の意思はどうですか?」という問いかけが出発点になっていました。
「この人はこうすべき」ではなく「この人はこうしたい」を軸にケアを考える——言葉にすると当たり前のことかもしれない。でも、日本の病棟で慌ただしく動いていた自分には、あらためてハッとさせられることでした。
大変だったのは、食事の提供です。利用者一人ひとりに細かい好みがありました。たとえば朝食であれば、調理師が用意したものがフロアに上がってきます。そこから、利用者の好みの量、トーストかポリッジ(オートミール粥)か、コーンフレークか、コーヒーか紅茶か、紅茶でもブラックかホワイト(ミルク入り)か、1杯か2杯か、部屋食か食堂で食べるか——本当に細かく分かれていました。
しかも、これはどこかに記載されているわけではなく、口頭で引き継がれていく文化でした。レギュラースタッフは把握していますが、私のような新人や留学生スタッフは、毎回確認しながら間違えずに提供することが本当に大変でした。

これが施設の配膳カートです。入居者一人ひとりのトレーが段ごとに並んでいて、それぞれの好みに合わせた食事をセットしてフロアへ運びます。一見シンプルに見えて、把握しなければならない情報量はかなり多かったです。
印象的だったオーストラリアの職場文化|R U OK? Day

南半球のオーストラリアは日本と季節が逆で、9〜11月が春。街中ではジャカランダの紫色の花が満開になり、「ああ、もう春だな」と感じさせてくれます。
働いていてもう一つ印象的だったのは、メンタルヘルスへのオープンな姿勢でした。
オーストラリアには「R U OK? Day(アール・ユー・オーケー・デイ)」という、毎年9月の第2木曜日に行われる全国的なメンタルヘルス啓発の日があります。「Are you OK?(大丈夫?)」と身近な人に声をかけることで、自殺予防や心の不調の早期発見につなげようという取り組みです(R U OK? 公式サイト)。
私が働いていた施設でも、その日にスタッフ全員にメッセージカード付きのチョコレートが配られました。

「An easy question that leads to an important conversation(簡単な質問が、大切な会話につながる)」というメッセージとともに、上司や同僚から「最近どう?無理してない?」と何気なく声をかけられたのを覚えています。
日本の医療・介護現場では、メンタルヘルスは「自己管理の話」として扱われがちで、職場全体で気にかけ合う文化はまだまだ薄いように感じます。「大丈夫?」と気軽に聞く・聞かれる空気があることは、燃え尽きやすい対人援助職にとって、すごく救いになるものだと感じました。
帰国してからも、後輩や同僚が疲れていそうなときに「大丈夫?」とひと言かけるようにしています。あのチョコレートをもらったときの、ほっとした気持ちを思い出しながら。
在宅ケア(訪問介護)での仕事
在宅ケアでは、1人で利用者さんのお宅を訪問し、決められたサービス(掃除・調理・買い物同行・入浴介助・通院同行など)を提供します。
1件の訪問時間は30分〜2時間ほどで、1日に複数件まわることもあります。移動は車やバスが基本で、私は現地で中古車を購入して対応しました。
在宅では、施設と違って「その方の生活の中にお邪魔する」感覚が強く、利用者さんとの会話(英語)がとにかく大切でした。最初は聞き取るだけで精一杯でしたが、同じ方を繰り返し担当するうちに、少しずつコミュニケーションが取れるようになっていきました。
週2回担当していた80代の女性が、ある日「あなたが来るのが楽しみなのよ」と言ってくれました。英語で言われた言葉なのに、意味が体の奥までまっすぐ届いた気がしました。言葉が完璧に通じなくても、関わりの積み重ねで信頼は育つ——そう実感した瞬間でした。
ただ、言葉が通じないとトラブルにつながる場面もあるため、責任のある仕事を任されるほど「伝えなければ」という必死さで英語力がどんどん上がっていきました。日本にいるときとは必死さの種類が違ったと思います。毎回ドキドキしながら訪問していました。「日本でもっと英語を話せるようになっていれば」と何度も悔やみましたが、悔やんでも始まらないので、日々の現場で必死に学んでいくしかありませんでした。
英語でのコミュニケーションの壁と乗り越え方
正直、英語は苦労しました。特に最初の2〜3ヶ月は、利用者さんの言葉が聞き取れなくて、笑って誤魔化してしまうことも多かったです。オーストラリア英語のアクセントは日本で習う英語と大きく違い、「これが英語か…」と耳が慣れるまでに時間がかかりました。
ただ、介護の現場では「言葉」だけがコミュニケーションではありませんでした。表情・身振り・行動で伝えることの大切さを、言葉が通じないからこそ身をもって学びました。日本語でケアをしてきた自分が、言語を取り去ったときに何を残せるかを問われているような感覚でした。
職場のスタッフや利用者さんが、私の拙い英語を責めることなく根気よく付き合ってくれたことには、今でも感謝しています。
看護師のオーストラリアワーホリで得たもの・失ったもの(正直に書きます)

休日には、こんなふうに人の少ないビーチを訪れることもありました。「日本ではこういう景色を見ながら自分のキャリアを考える時間はなかったな」と、ふと立ち止まって考えさせられる瞬間がたくさんありました。
得たもの
① 看護師としての「枠」が広がった
病棟・クリニック・訪問看護以外にも、世界には看護師・保健師・介護の知識を活かせるフィールドがある——それを体で知ることができました。「看護師の仕事って、こんなに多様だったんだ」という発見は、帰国後のキャリア選択の視野を確実に広げてくれました。特に在宅・地域での生活を支えるケアへの関心が、この経験を通じて深まりました。
② 英語への苦手意識が薄れた
ビジネスレベルには程遠いですが、日常会話・介護場面でのコミュニケーションは何とかこなせるくらいにはなりました。「英語ができない」という壁が「なんとかなる」に変わったことは、大きな収穫です。
③「なんとかなる」という根拠のない自信
異国の地で、英語もままならないまま、知らない人たちの生活に関わり続けた経験は、「あの環境でやれたんだから、これくらいできる」という感覚を植えつけてくれました。これは言葉で説明しにくいですが、確かに自分の中にある財産です。
④ 日本の「当たり前」を問い直す視点
日本の医療・介護の良いところも課題も、外から見ることで初めて見えてくることがありました。「なんとなくそういうものだと思っていた」ことを、「なぜそうなのか」と考え直すクセがついたことは、帰国後の仕事にも活きています。
お金も時間も使いましたが、これらは「行かなければ絶対に手に入らなかった」と断言できるものばかりです。正直に「失ったもの」も書きますが、それも含めて後悔はありません。
失ったもの
① 貯金とキャリアの空白
準備と生活費で、数百万円の貯金が減りました。また、帰国後の転職活動では「空白期間があること」を説明する機会が何度かありました。ただ、「失ったものか?」と問われると、そこまで悲観するものではなかったと感じています。得られたものの方がはるかに多かったからです。

休日の小さな楽しみも、ワーホリ生活を支えてくれた大切な思い出です。これは「世界一幸せな動物」と呼ばれるクオッカ。仕事も英語も大変な日々のなかで、こういう何気ない瞬間が心の栄養になっていました。
ワーホリから帰国後の看護師の転職活動|成功させるコツ
ここからは、看護師がオーストラリアワーホリから帰国した後、どうやって日本での転職活動を再スタートさせるか——「ブランクは不利になるんじゃないか」という不安に対する、私自身の答えと具体策をお伝えします。
帰国後の転職活動で「ブランク」は本当に不利?
結論から言うと、伝え方次第でプラスにもマイナスにもなります。
私が帰国後の転職活動で実感したのは、「海外で介護の現場で働いた」「英語でコミュニケーションしながら仕事をした」という経験は、特に以下の職場の面接では興味を持ってもらいやすい話題だったということです。
- 訪問看護ステーション(在宅ケア経験との親和性)
- 健診センター(多様な受診者への対応力)
- 産業保健(多文化対応・予防医療の視点)
- 高齢者施設(介護現場の海外比較経験)
「空白期間」については正直に説明しましたが、「それだけのことを経験してきたのか」という受け止め方をしてくれる面接官も多く、ネガティブな影響はほとんど感じませんでした。
帰国後の転職活動でやるべき3つの準備
ワーホリから戻った直後は、日本の医療制度・職場ルール・最新動向の感覚が一時的に薄れている状態です。私が実際にやって良かった準備を3つ紹介します。
① 職務経歴書をワーホリ経験込みで書き直す
「ブランク」ではなく「経験期間」として、Certificate IIIの取得・施設や在宅での具体的な業務内容を書き起こします。書き方の詳しいコツは 看護師の履歴書・職務経歴書の書き方 で解説しています。
② 看護師専門の転職エージェントに登録する
帰国直後は「今の日本の求人市場でどう評価されるか」が見えにくい状態です。看護師専門の転職エージェントに登録すれば、自分の経歴に合った求人を提案してもらえるだけでなく、面接対策・条件交渉まで一括で支援してもらえます。エージェント選びのコツは 看護師の転職エージェント活用術 にまとめています。
③ 面接で「ワーホリ経験」を語る言葉を準備する
「海外でただ遊んでいたわけではない」ことを示すために、Certificate III取得の事実・実習時間・現場での具体的なエピソードを面接前にまとめておきましょう。面接質問への答え方は 看護師の転職面接Q&A を参考にしてみてください。
ワーホリ経験が今の私の仕事にどう活きているか
現在、訪問看護師として働いている私にとって、オーストラリアでの在宅ケアの経験は「利用者さんの生活の中に入らせてもらう」という感覚を理解するうえで、確実に役立っています。
「言葉が通じなくても関わり続ける」という経験は、言語コミュニケーションが難しい方(認知症・難聴・外国にルーツを持つ方など)と向き合うときの姿勢にも影響していると感じます。訪問看護の現場で「保健師的な視点」「介護職としての視点」を持てることは、利用者さんへのケアの幅を広げてくれていると思っています。
帰国後の転職活動で「あなたのキャリア、面白いですね」と言ってもらえたとき、ワーホリでの遠回りが報われた気がしました。準備さえ整えれば、ワーホリ経験はキャリアの武器になります。
よくある質問(Q&A)
Q1. 英語がほとんどできなくても行けますか?
A. 行けます。私が渡航したとき、日常会話レベルも危うい状態でした。現地の語学学校で基礎を固める期間を設けること、Certificate IIIの授業中に否応なく英語に向き合い続けること、そして介護の現場で毎日英語を使うことで、「生きた英語力」が少しずつついてきました。「今すぐ流暢に話せなければ行けない」ということは全くありません。
Q2. 看護師として現地で働くことはできますか?
A. オーストラリアで「看護師(Registered Nurse)」として働くには、AHPRA(Australian Health Practitioner Regulation Agency/オーストラリア医療従事者規制局)への資格登録が必要です。英語要件としてIELTSアカデミック総合7.0以上(各セクション7.0以上)、またはOET(Occupational English Test)でBグレード以上といった基準が公式に設定されているといわれています。これはワーホリ中に達成することが難しいケースが多いです。一方、Certificate IIIを取得すれば「Personal Care Worker(個人ケアワーカー)」として合法的に就労できます。看護師としての臨床経験は職場でプラス評価される場面もあります。
Q3. ワーホリ中の収入はどのくらいですか?
A. オーストラリアには全国最低賃金(National Minimum Wage)の制度があり、介護の仕事はその基準に沿った時給が支払われます。最低賃金はFair Work Commissionによって毎年7月に改定されており、近年は時給24〜25オーストラリアドル前後で推移しているといわれています。シフト制のことが多く、週のシフト数によって収入は大きく変わるため、「生活費の一部を賄う」程度に考えておくのが現実的です。最新の時給は Fair Work Ombudsman の公式サイトでご確認ください。
Q4. 年齢が30歳に近い・過ぎている場合はどうすればいいですか?
A. ワーホリビザ(サブクラス417)は申請時点で30歳以下である必要があります。すでに30歳を超えている方には、学生ビザや就労ビザなど別の選択肢があります。年齢が迫っている方は「渡航するかどうか決める前にビザだけ先に申請しておく」という方法も検討してみてください。申請後に渡航タイミングを後ろにずらすことは可能です。
Q5. 帰国後のキャリアへの影響が心配です。空白期間はどう説明すればいいですか?
A. 「空白期間」ではなく「経験期間」として伝えることが大切です。「オーストラリアでワーホリをし、Certificate IIIを取得して高齢者介護の現場で働きました。在宅ケアを通じて利用者中心のケアとはどういうことかを学んできました」という伝え方ができれば、転職活動においてプラスに作用することが多いです。具体的な書類の書き方は 看護師の履歴書・職務経歴書の書き方 を参考にしてみてください。
Q6. 帰国後すぐに転職活動を始めるべきですか?転職エージェントは使った方がいい?
A. 帰国直後は日本の求人市場の感覚が掴みにくいため、看護師専門の転職エージェントに登録して市場感を把握することをおすすめします。エージェントは非公開求人の紹介・面接対策・条件交渉まで無料で支援してくれます。複数のエージェントを比較しながら使い分けるコツは 看護師の転職エージェント活用術 で詳しく解説していますので、あわせて読んでみてください。
Q7. 看護留学エージェントは使った方がいいですか?
A. 答えは「あなたの英語力・行動力・初海外かどうか」によります。
私は「ワールドアベニュー」という看護師向け留学エージェントを利用しました。理由は、英語に自信がない状態で初めての長期海外滞在だったため、Certificate IIIのRTO選び・ビザ申請・渡航準備・現地サポートまでを日本語で一括サポートしてもらえる安心感が欲しかったからです。
エージェントを使うメリット:
- RTO選びで失敗しにくい(看護師向けプログラム特化)
- 日本語で相談できる
- 渡航前〜帰国後まで一貫したサポート
エージェントを使わないメリット:
- 費用を抑えられる
- 自分で動く力がつく
- 選択肢を自分で全部見て決められる
「絶対にどちらが正解」というものはなく、自分の不安ポイントが何かを整理してから決めるのがおすすめです。看護留学エージェントの多くは無料カウンセリングを実施しているので、まず話を聞いてから判断するのも一つの方法です。
「行きたい」と思った方が今日からできること
「いつか」と思いつつ動けないまま時間が過ぎてしまうのが、ワーホリで一番もったいないパターンです。何かを大きく決断する必要はなく、今日からでも始められる小さな一歩があります。
① オーストラリア内務省の公式サイトを開いてみる ワーホリビザ(Subclass 417)の最新の申請条件・費用を一度確認するだけでも、「自分にも申請できそう」という具体的な感覚がつかめます。
② RTOを2〜3社ピックアップしてみる 「シドニー Certificate III RTO 日本語サポート」などで検索し、コース内容・期間・費用を比較するだけでも、現地のイメージが湧きます。
③ 周りに「興味がある」と話してみる ワーホリ経験者が意外と身近にいることに気づくこともあります。話すこと自体が、自分の本音を整理する第一歩になります。
まとめ:「行く」という選択肢を消さないでほしい
看護師として働きながら「いつかは海外に」と思い続けてきた私が、実際に行って帰ってきて思うのは、「行けてよかった」のひと言です。準備も大変だったし、現地での苦労もリアルでした。でも、あの経験が今の私のベースになっていることは間違いありません。
「海外に行く」ことは、看護師としてのキャリアを捨てることではありません。看護師としての経験・視点・スキルを持ったまま、全く違う環境に身を置くことで見えてくるものがあります。それは、日本の職場にいるだけでは絶対に手に入らないものでした。
ケアの本質は、国や言語を超えて共通しているものがある。そのことを体で知れたことが、私がオーストラリアのワーホリから持ち帰った、最も大きな財産です。
「今がいいタイミングかどうか」は、永遠にわかりません。でも、ワーキングホリデービザには年齢制限があります。「やってみよう」という気持ちが今あるなら、まずビザの申請条件だけでも調べてみてください。小さな一歩が、大きな経験の入り口になるはずです。
そして、帰国後のキャリア再構築まで含めて考えるのが、ワーホリを「投資」として最大限活かすコツです。下記の関連記事もあわせて読んで、自分なりの「行って、帰って、その先」のキャリアプランを描いてみてください。
あわせて読みたい関連記事
- 看護師の転職エージェント活用術|エージェント比較
- 看護師の履歴書・職務経歴書の書き方
- 訪問看護師への転職完全ガイド
- 健診センター看護師の転職完全ガイド
- 保健師資格の活かし方|5つのキャリアパス
- 看護師の転職面接Q&A
出典・参考
- Australian Government Department of Home Affairs「Working Holiday visa(Subclass 417)」(オーストラリア内務省・ワーホリビザ417の要件・申請費・延長条件)
- training.gov.au「CHC33021 Certificate III in Individual Support」(オーストラリア政府公式のVET資格情報サイト)
- Australian Skills Quality Authority(ASQA)「National Register of VET」(登録訓練機関の認証情報)
- Fair Work Ombudsman「Minimum wages」(全国最低賃金の改定情報・毎年7月改定)
- Nursing and Midwifery Board of Australia(AHPRA)「English language skills registration standard」(海外看護師の英語要件)
- Australian Government Department of Health and Aged Care「Aged Care Quality Standards」(高齢者ケアの質基準)
- 公益社団法人 日本看護協会「看護職の倫理綱領」(2021年改訂版)
- R U OK?「Australia’s National Day of Action for Suicide Prevention」(オーストラリアのメンタルヘルス啓発活動)
※本記事は筆者(とし)の実体験(ワーホリ渡航当時の情報)に基づいています。ビザの要件・費用・最低賃金などは随時改定されますので、最新情報はオーストラリア政府の公式サイトでご確認ください。費用相場は2026年5月時点の各種留学エージェント・現地物価情報を参照しています。
