「病棟の忙しさに限界を感じて、訪問看護に転職したいけど、実際どうなんだろう?」と悩んでいませんか?
病棟ナースとして働いていると、夜勤・残業・慢性的な人手不足……毎日へとへとになりながら「もっと一人ひとりの患者さんとじっくり向き合いたい」と感じる瞬間、一度はあるんじゃないかと思います。
私は現在、移動時間約1時間の地域で訪問看護師として勤務しています。病棟・産業保健師・応援ナース・海外ワーホリとさまざまなキャリアを経験した後、訪問看護の現場にたどり着きました。
この記事では、実際に転職した立場から、病棟との違いや仕事のリアル、転職成功のポイントまで丁寧にお伝えしていきます。
この記事でわかること
- 訪問看護師の仕事内容と1日の流れ
- 病棟看護師との違い(業務・給与・働き方)
- 訪問看護に向いている人・向いていない人の特徴
- 転職を成功させるための具体的なステップ
- 転職エージェントを使うメリットとおすすめサービス
私が訪問看護師を選んだ3つの理由
転職理由は人それぞれですが、私自身が訪問看護に踏み切った理由をお伝えします。参考にしていただければ幸いです。
理由①:在宅医療の需要がこれから確実に増える
第一の理由は、在宅医療が今後の日本医療でますます重要な役割を担うと判断したからです。
内閣府「令和7年版高齢社会白書」(2025年)によると、2025年には75歳以上の人口が約2,008万人に達し、団塊世代が全員後期高齢者となります。さらに2040年には65歳以上が全人口の約34.8%を占める見込みで(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」)、増え続ける高齢者を病院だけで支えることが構造的に難しくなっていきます。
この現実を踏まえ、厚生労働省は2024年から始まった「第8次医療計画」(2024〜2029年度)で、在宅医療を5疾病6事業と並ぶ最重要分野として明確に位置づけました。計画では在宅医療の機能として「退院支援・日常療養支援・急変時の対応・看取り」の4つを柱に掲げ、各都道府県に2040年を見据えた在宅医療体制の整備目標を設けることを義務づけています。実際、全国203の二次医療圏で2040年に向けて在宅患者数がピークを迎えると推計されています。
こうした流れを受けて、訪問看護ステーションの数は急速に増えています。全国訪問看護事業協会の調査(令和6年度)によると、2024年4月時点の稼働数は17,329か所と前年比10.4%増加し、過去最高の伸び率を記録。2025年4月には18,042か所に達しています。
「需要がある仕事に就きたい」——その判断として、訪問看護師を選んだことは間違いなかったと感じています。
理由②:一人ひとりと、そして家族全体と関わりたい
第二の理由は、看護の本質的なやりがいに立ち返りたいと思ったからです。
病棟では複数の患者さんを同時進行でみるため、一人ひとりとじっくり関わる時間がどうしても限られてしまいます。訪問看護では1回の訪問で1人の利用者さんに集中できるだけでなく、その方のご家族とも深く関わることができます。
「家で過ごしたい」という思いを叶えること——それは看護の醍醐味だと感じています。自宅に入ってはじめてわかる生活のリアル、家族の思い。そこに寄り添える仕事に魅力を感じました。
理由③:正直に言うと、通勤電車と多人数対応から解放されたかった
本音も書きます。通勤電車が苦手で、自分のペースで動ける仕事がしたかったという気持ちもありました。
訪問看護は、1日のスケジュールを自分でコントロールしやすく、移動中は音楽を聴いたりしながら気持ちを切り替えられます。「仕事と自分の時間のバランスを取りたい」という気持ちも、転職の正直な動機のひとつでした。
在宅医療の需要が増えるというのは、転職のタイミングとしても良さそうですね。
そうなんです。人手不足という意味では不安もありますが、「必要とされている仕事」という安心感はあります。求人が多いので、条件を比較しながら選びやすいのも訪問看護の特徴です。
訪問看護師とは?仕事内容をわかりやすく解説
訪問看護とは、看護師が利用者のご自宅や施設に訪問し、医療・看護ケアを提供するサービスです。病院内ではなく「生活の場」で看護を行う点が最大の特徴です。
主な業務内容
- バイタルチェック:血圧・脈拍・体温・SpO2などの確認
- 医療処置:点滴管理、カテーテルケア、褥瘡(じょくそう)処置、ストーマ管理など
- 服薬管理・指導:薬の飲み忘れ防止、副作用観察
- リハビリテーション支援:日常生活動作(ADL)の維持・向上
- ターミナルケア:終末期の療養支援と家族へのサポート
- 相談・指導:家族への介護指導、多職種との連携
医師・ケアマネジャー・ヘルパーなど他職種との連携も、日常的な業務の一部です。
訪問看護師の1日のスケジュール
日勤スタッフの1日の流れ(例)
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 8:30 | 出勤・朝礼・訪問スケジュール確認 |
| 9:00 | 1件目の訪問(バイタル・処置・家族対応など) |
| 10:00 | 移動(自転車または車) |
| 10:30 | 2件目の訪問 |
| 12:00 | 昼休憩(コンビニや商業施設に立ち寄ることも) |
| 13:00 | 3件目の訪問 |
| 14:30 | 4件目の訪問 |
| 16:00 | 5件目の訪問 |
| 17:00 | 事務所に戻る・記録作成・申し送り |
| 18:00 | 退勤 |
私のステーションでは、自転車と車どちらも使って訪問します。1日の訪問件数はおおよそ5件前後が多いです。
移動中は自分のペースで動けるので、コンビニや商業施設のトイレに立ち寄ったり、昼ごはんを買いに行く時間も取れます。病棟のように「休憩が取れるかどうか分からない」という状況とは大きく違い、時間の見通しが立てやすいのは助かっています。
病棟と訪問看護、ここが違う!徹底比較
業務の違い
病棟では複数の患者さんを同時並行でみますが、訪問看護は1件ずつ、1対1で関わるスタイルです。1回の訪問時間は30分〜90分が一般的で、その時間は利用者さんだけに集中できます。
一方、急性期病棟のように「すぐ医師に相談できる」という環境ではなく、自分でアセスメントして判断・対応する場面が増えます。
夜勤・オンコールの違い
訪問看護ステーションでは基本的に夜勤はありませんが、オンコール対応があるところがほとんどです。オンコールとは、夜間や休日に緊急の問い合わせや訪問対応を行う当番制のシステムのことです。
「夜勤をなくしたい」という理由で訪問看護を選ぶ方も多いですが、オンコールの実態は事前にしっかり確認することをおすすめします。
給与の違い
| 項目 | 病棟 | 訪問看護 |
|---|---|---|
| 夜勤 | あり(月4〜8回程度) | 基本なし(オンコールあり) |
| 残業 | 多め | 少なめ |
| 1対多の看護 | あり | なし(1対1) |
| 多職種連携 | あり | より日常的 |
| 給与水準 | 夜勤込みで高め | 夜勤なしで安定的 |
| 独立性 | 医師がそばにいる | 一人で判断する場面が多い |
【体験談】物品コストへの意識が変わった
病棟でも「コスト意識を持って」とよく言われますが、訪問看護でその意識は別次元になりました。
在宅では、使う物品は利用者さんご自身やご家族が用意したものです。金銭的に余裕のないご家庭では、消耗品のひとつひとつを大切に使わなければなりません。ケアを行うとき、「最低限必要な物品は何か」「シーツを汚してしまったら交換の手間や洗濯の負担が家族に増える」ということを常に意識するようになりました。
清潔ケアひとつとっても、汚さないための工夫や、使う物品の量を最小限にする技術が求められます。物品コストへの意識と、「汚さないケア」の視点は、訪問看護師として特に意識しておくと良いポイントだと思います。
給与が下がるのが気になります。どのくらい差があるんでしょうか?
夜勤をしていた頃と比べると、手取りで月3〜5万円ほど変わることもあります。ただ、残業がほぼなくなって「時間の質」が上がった分、満足感は高いです。処遇改善加算が手厚いステーションを選べばそれほど大きな差にならないこともあるので、エージェントに相談して条件の良い求人を探すのがおすすめです。
訪問看護師の給与・収入のリアル
訪問看護師の平均月収は、地域や施設形態によって差がありますが、おおよそ月給28〜38万円程度(夜勤なし・経験5年以上の場合)といわれています。病院勤務で夜勤をしていた場合と比べると、月3〜6万円程度低くなるケースが多いです。
ただし、以下の条件が揃えばそれほど大きな差はありません。
- 処遇改善加算が手厚いステーション(介護報酬の加算制度を活用しているか)
- 訪問件数の歩合やインセンティブ制度がある
- 残業がほぼなく、プライベートの時間が確保できる
訪問看護ステーションは小規模な事業所が多く、求人票の給与と実態が一致しないケースもゼロではありません。転職エージェントを通じてオンコール手当の額・残業の実態などを事前に確認することが非常に重要です。
訪問看護に向いている人・向いていない人
向いている人
- 患者さん・利用者さんと長期的にじっくり関わりたい
- 自分のペースで仕事を進めたい
- 地域医療・在宅ケアに興味がある
- 臨床経験があり、ある程度自分でアセスメントできる自信がある
- 多職種と連携しながら働くのが好き
- 運転が好き、または苦にならない
向いていない人
- 一人で訪問することへの不安がとても強い
- 急変時など「すぐ医師に相談できる環境」が必要と感じる
- 車の運転に自信がない(地域によっては必須)
- 利用者さんのご家族とのコミュニケーションが苦手
- 記録作業(電子カルテ・報告書作成)が極端に苦手
【としの体験談】訪問看護に転職してリアルに感じたこと
初めての単独訪問——緊張と向き合い方
最初は、やはり緊張しました。
慣れない利用者さん宅に一人で向かい、「ちゃんと対応できるだろうか」というプレッシャーを感じていました。でも、そのときに意識するようにしたのは「わからないことは、利用者さんやご家族に正直に聞く」ということです。
「いつもと少し違うのですが、以前はどうされていましたか?」と聞けば、多くの場合ていねいに教えてもらえます。わからないまま進めてしまう方が、信頼関係を損なうリスクがあります。少しずつ顔を覚えてもらい、「あなたが来てくれるから安心」と言ってもらえたとき、この仕事を選んで良かったと感じました。
「自分でアセスメントして対応する」って、やっぱり怖いんですが、慣れましたか?
慣れます。最初の数か月は本当にドキドキしましたが、事業所のスタッフに電話相談できる環境があれば一人ぼっちじゃないです。「困ったらすぐ聞いていい職場かどうか」を、面接や見学で事前に確認するのが大切だと思います。
オンコールとの付き合い方
オンコール対応を始めた頃は緊張していました。でも緊張しすぎると、オンコールのない日も心が休まりません。
そこで意識するようにしたのが、**「コールがかかりそうな利用者さんを事前にイメージしておくこと」**です。「この方は夜間に息切れが出ることがある」「この方はご家族が不安になりやすい」など、対応フローを頭の中で整理しておくと、実際にコールがきても落ち着いて対応できるようになりました。
また、コールがきたとしても、「自分一人で解決しなくていい」という環境が整っているステーションがほとんどです。バックアップスタッフや管理者に相談できる体制があれば、オンコールへの不安はかなり和らぎます。
訪問看護師に転職するための具体的なステップ
ステップ1:自分の経験とスキルを棚卸しする
訪問看護は経験年数よりも、スキルの幅広さが求められます。点滴管理・褥瘡ケア・ターミナルケアなど、今まで経験した処置や対応を書き出してみましょう。
一般的に、最低でも3年以上の臨床経験があると転職活動がスムーズです。
ステップ2:訪問看護ステーションの情報収集をする
確認しておきたいポイントは以下のとおりです。
- オンコールの頻度・体制(月何回か、1人対応か複数対応か)
- スタッフ数と経験者の割合
- 新人・中途入職者向けの教育体制
- 訪問エリア・移動手段(車必須かどうか)
- 利用者の主な疾患・年齢層
- 電子カルテの使用状況
ステップ3:転職エージェントに登録する
訪問看護の求人は、ハローワークや求人サイトに載っていない非公開求人も多いため、看護師専門の転職エージェントの活用が非常に有効です。
ステップ4:書類・面接の準備をする
「なぜ訪問看護を選んだか」「在宅ケアでどんな看護を実現したいか」という志望動機を面接で語れるよう準備しておきましょう。
転職エージェントを使うメリット
- 非公開求人にアクセスできる
- 給与・条件交渉を代行してもらえる
- オンコールの実態など内部情報を確認してもらえる
- 書類添削・面接対策まで無料でサポート
おすすめの転職エージェント
- レバウェル看護:求人数が多く、訪問看護ステーションの求人にも強い。担当者が親身に対応してくれると評判
- マイナビ看護師:全国対応で在宅系の求人も豊富。求人票に出ない内部情報を教えてもらいやすい
- ナース人材バンク:地域密着型の求人に強く、地方・郊外の訪問看護ステーションを探したい方におすすめ
いずれも無料で利用できます。2〜3社に登録して比較するのが有効です。
エージェントって何社も登録していいんですか?しつこく連絡が来たりしませんか?
2〜3社は一般的ですよ。連絡頻度は担当者によって違いますが、最初に「週1回まとめてください」と伝えれば対応してもらえます。急いでいない場合はその旨も正直に伝えて大丈夫です。
よくある質問(Q&A)
Q1. 看護師経験が2年しかありませんが、訪問看護に転職できますか?
A. 絶対に無理というわけではありませんが、1人でアセスメントして対応する場面が多いため、ある程度の臨床経験があると安心です。一般的には3年以上の経験があると転職しやすいといわれています。まずは転職エージェントに相談して、自分のスキルで応募できる求人があるか確認してみましょう。
Q2. 訪問看護はオンコールが大変と聞きますが、実際どうですか?
A. オンコールの頻度や負担はステーションによって大きく異なります。私自身が実感したのは、「事前のイメージトレーニング」と「バックアップ体制の確認」が大切だということ。コールがかかりそうな利用者さんを日頃から把握し、対応フローを頭に入れておくと落ち着いて対処できます。見学や面接で「月何回の当番があるか」「一人対応か複数体制か」を必ず確認しておきましょう。
Q3. 車の運転ができないと訪問看護師は無理ですか?
A. 地域によっては自転車や公共交通機関で訪問できるステーションもあります。私のステーションも自転車と車の両方を使っています。都市部では自転車対応のところもあるので、「車に乗れないけど訪問看護に転職したい」という方はエリアを絞って求人を探してみましょう。
Q4. 訪問看護ステーションの規模はどう選べばいいですか?
A. 小規模なステーションはアットホームな反面、オンコール負担が集中しやすい傾向があります。大規模・病院附属のステーションは教育体制が整っていることが多く、初めての転職でも安心して働きやすいでしょう。中途入職者向けの研修があるかどうかを事前に確認するのがおすすめです。
Q5. 訪問看護師として転職後、再び病棟に戻ることはできますか?
A. もちろんできます。訪問看護で身につくアセスメント力・多職種連携の経験は、病棟でも高く評価されます。「一度転職したら戻れない」ということはありませんので、まずやってみるという気持ちで転職活動を進めても大丈夫です。
まとめ|まず情報収集と職場見学から始めてみよう
訪問看護師への転職は、病棟では得られない「その人の生活を支える看護」を実現できる選択肢です。一人で訪問すること、オンコールがあること、コスト意識が求められることなど、病棟とは違う部分もあります。
でも、最初から完璧な準備は必要ありません。まず転職エージェントに登録して話を聞いてもらい、気になるステーションがあれば見学に行ってみる——その一歩が、自分に合う職場を見つける近道になります。
「この仕事を選んでよかった」と感じている今の自分から、転職を迷っている方へ。まずは情報を集めることから始めてみてください。
