「助産師を辞めたい」と思ったことが、ありますか。
もし今、その気持ちを抱えているなら、一人で抱え込まないでほしいと思います。
助産師という仕事は、「命の誕生に立ち会える尊い仕事」「やりがいがある」と周囲からも社会からも言われ続けます。だからこそ、辞めたいと感じたとき、どこか罪悪感のようなものが生まれてしまう。「こんなに素晴らしい仕事なのに辞めたいなんて、自分がおかしいのかな」「もっと頑張れるはずなのに」と、辞めたい気持ちを押し殺して、また夜勤に向かう——そういう経験をしている方が、きっと少なくないはずです。
私自身、助産師として5年間病棟で働きました。出産の瞬間に立ち会う喜びも、赤ちゃんの産声に胸が震える瞬間も、本物でした。でも同時に、「このまま続けていいのかな」という気持ちも、ずっと心のどこかにありました。
やりがいはあるんです。でも、もう続けられないかもしれない…。こんなふうに思う私は、甘えているんでしょうか。
甘えなんかじゃありません。私も同じ場所に立っていました。この記事では、辞めたい気持ちの整理の仕方と、実際に辞めた私のリアルなその後を、包み隠さずお話ししますね。
この記事は、助産師を辞めたいと感じているあなたに向けて、辞めたいと思うことは、弱さではありません ということ、そして実際に辞めた私がたどったキャリアのリアルを、正直にお伝えします。一緒に、これからのことを考えてみましょう。
この記事でわかること
- 助産師が「辞めたい」と感じる7つの理由とその背景
- 辞めるべきサイン・続けるべきサインの見分け方
- 辞めて後悔する人・満足する人の特徴
- 助産師を辞めた後の具体的なキャリア選択肢6つ
- 転職を考えたときに活用したいサービスと使い方
助産師が辞めたいと感じる7つの理由
助産師として働く中で「辞めたい」と思う気持ちは、決して珍しいことではありません。その背景には、この職種に特有のさまざまなプレッシャーがあります。よくある7つの理由を見てみましょう。

どれかひとつでも「わかる…」と感じたなら、それは甘えではありません。あなただけが抱えている悩みではないんです。
1. 責任の重さと常にあるプレッシャー
助産師の仕事は、母子2人の命を預かる仕事です。出産は生理的な現象でありながら、一瞬で緊急事態に転じる可能性を常にはらんでいます。異常の早期発見、急変時の対応、医師への報告のタイミング——全ての判断に「ミスは許されない」という緊張感が伴います。
この重圧は、年数を重ねるほどに軽くなるかというと、必ずしもそうではありません。むしろ経験が積まれるほど、「自分が見落としていたら」という想像力も増し、精神的な消耗が深くなる方も多くいます。責任感の強い人ほど、この重さを一人で抱えやすいのが助産師という仕事の難しさでもあります。
2. 夜勤・精神的消耗
出産は昼夜を問いません。分娩を扱う病棟で働く助産師は、夜勤(交代制)が必須であるケースがほとんどです。
夜勤明けに十分な休息が取れない、生活リズムが昼夜逆転しがちになる、眠りが浅くなる——こうした生活が続くと、体はもちろん、気力も確実に削られていきます。「好きな仕事なのに、なぜこんなに辛いのだろう」という感覚は、多くの場合、この慢性的な疲労が根底にあります。
3. 人間関係(先輩・医師・看護師との関係)
医療現場の人間関係の難しさは、助産師の職場でも同様です。特に、年功序列の文化が色濃く残る病棟では、先輩の指導が厳しく、新人・中堅問わず萎縮してしまう環境になっていることもあります。
また、産婦人科医との連携においても、「どこまで助産師の判断で動いていいのか」という境界線に悩んだり、医師の指示と自分のアセスメントが異なるときの葛藤を感じたりすることもあるでしょう。こうした人間関係の摩擦が積み重なると、仕事そのものへの意欲が失われていきます。
さらに、産科病棟では助産師だけでなく看護師も一緒に働いていますが、時短勤務のママさん看護師が多いのも特徴です。その背景には、産科は他科と比べて業務量が異なるという事情があります。認知症の高齢者の方が入院していないためナースコール対応が少なく、トイレ誘導や清潔ケアの介助も比較的少ない。病棟のルールや安静度を一度伝えれば理解していただける方が多く、基本的に産科病棟で人が亡くなることもまずありません。
そのため、他科で経験を積んできた看護師が産科に来ると、これまで培ってきた看護スキルを発揮する場面が減ってしまうことがあります。すると、看護師と助産師の間で仕事への意識のズレが生まれ、私自身、看護師さんとの関係に難しさを感じる場面が何度もありました。
正直に書くと、陰で「どうせ助産師は股しか見られない」という言葉を耳にして、悔しい思いをしたこともあります。ただ、悔しいと感じるということは、裏を返せば「自分は全身状態のアセスメントが十分にできていないのかもしれない」という引っかかりが、自分の中にもあったのだと思います。こうした葛藤も含めて、産科という空間ならではの人間関係の難しさは、確かにありました。
4. 助産師業界の閉鎖性(異動が少なく、逃げ場が少ない)
助産師の職場には、看護師以上に人間関係が固定されやすい という特徴があります。助産師が働くのは、基本的に産科、もしくは産科と婦人科の混合病棟です。他科への異動がほとんどないため、いったん「この人間関係、しんどいな」と感じても、当事者の誰かが辞めない限り、同じメンバーで関係が続いていきます。逃げ場の少ない、閉鎖的な環境になりやすいのです。
実際、退職した助産師が転職先で元同僚と再会した、という話は本当によく聞きます。全国の就業助産師数は約3万8千人(令和4年・厚生労働省「衛生行政報告例」)と、もともと人数の限られた専門職です。母集団が小さい分、人のつながりが固定されやすく、働く場所を変えても「また同じ顔ぶれ」になりやすい——看護師の世界と比べても、狭い業界だと感じる場面は少なくありませんでした。
5. 少子化による将来への不安
もう少し長い目で見たときの不安もありました。助産師が扱うのは、基本的に正常分娩です。活躍できる職場は病院だけではありませんが、今後の人口動態を考えると、少子化は避けられません。実際、2024年の出生数は68万6,173人で、統計開始以来はじめて70万人を割り込み、過去最少を更新しました(厚生労働省「人口動態統計」)。
出生数の減少に伴い、長い目で見れば産科病棟の集約や、分娩を取り扱う施設の減少が進む可能性もあります。そうなると、助産師として働ける場所や、職場を選べる自由度も少しずつ狭まっていくのではないか——固定されやすい人間関係、限られた職場、そして縮んでいく市場を重ねて考えたとき、私は「助産師として働き続けることは、かえって自分のキャリアの選択肢を狭めてしまうかもしれない」と感じるようになりました。
6. 「やりがいはあるけど、このまま続けたくない」という感覚
これは言語化しにくいですが、多くの助産師が経験する感覚です。出産の瞬間は感動するし、産婦さんに「ありがとう」と言われれば嬉しい。それは本物です。でも、「この働き方を、この環境を、あと10年続けられるか」と問われると、どうしても首を縦に振れない。
やりがいと、続けたい気持ちは、別物です。やりがいを感じていても、今の働き方が自分の人生に合っていなければ、辞めたいと思うのは至極自然なことです。「好きだから辞めてはいけない」という思い込みは、手放してもいいと私は思います。
7. ライフイベント(結婚・出産)との両立の難しさ
結婚、妊娠、育児——ライフステージの変化が、助産師という働き方に大きな影響を与えることがあります。夜勤やオンコールがある職場では、パートナーや家族の協力なしには続けにくい場面も増えます。
「子育てしながら夜勤を続けるのは限界」「家族の時間を大切にしながら働きたい」という思いから、転職を考え始める方も多くいます。これは仕事への不満ではなく、自分のライフスタイルに合った働き方を選ぶという、ごく当たり前の選択です。
これは、私が今でも忘れられない出来事です。以前一緒に働いていた先輩が、不妊治療を続けながら勤務していました。あるとき先輩は、「自分はなかなか妊娠できないのに、昼夜を問わずお産で来られる妊産婦さんの分娩介助をしていると、なんとも言えない気持ちになる」と、ぽつりと話してくれたことがありました。
ある日勤の落ち着いた時間帯に、その先輩と一緒に働いていたときのことです。先輩の身体に、つらい変化が起きていました。幸い病棟が落ち着いていたため、病棟医に連絡を取り、先輩は医師とともに処置を受けることになりました。
その光景を間近で見て、私は「ライフイベントと助産師の仕事を両立させることは、本当に難しい」と痛感しました。不規則な勤務を続けながら不妊治療に向き合うことの過酷さを、目の当たりにした出来事でした。
辞めるべきサイン・続けるべきサインで自分を確認する
「辞めたい」という気持ちはあるけれど、本当に今が辞めどきなのかわからない——そういう方も多いと思います。「疲れているだけかもしれない」「もう少し頑張れるかもしれない」と自問しながら、答えが出ないまま日々が過ぎていく。
そういう方に向けて、「今すぐ動くべきか」「もう少し様子を見るか」を判断するサインをまとめました。
今すぐ転職を検討すべきサイン
- 休日明けに「仕事に行きたくない」が毎週続いている
- 体や心に不調が出てきた(眠れない、食欲がない、涙が止まらないなど)
- 「もう2年以上、同じ問題で悩み続けている」
- 職場の問題(人間関係・体制)が改善される見込みがない
- 上司や先輩に相談しても何も変わらなかった
- 「助産師としてではなく、別の形で人の役に立ちたい」という思いが強まっている
これらが複数当てはまるなら、「辞める方向」で動き始めることを前向きに検討してください。特に心身の不調のサインは、放置すると回復に時間がかかります。
もう少し続けてみてもいいサイン
- 辞めたい原因が「今の職場・チーム」に限定されている
- 「助産師という仕事自体は嫌いではない」という気持ちがある
- 職場を変えれば解決できる可能性がある
- 辞めたいと感じたのが、特に疲れていた時期に集中している
- プライベートで大きなストレスが重なっていた
「疲れているだけかもしれない…」と思うと踏み出せなくて。
「疲れているだけ」と「限界に来ている」は、全く別物です。まず体を休めてから改めて考えることも、大切な選択肢のひとつですよ。焦って判断しなくていいです。
「辞めたい」気持ちと向き合う前に確認したいこと
辞めたいという気持ちが生まれたとき、すぐに行動するのも大切ですが、まず少しだけ自分自身と向き合ってみることをおすすめします。
「今の病院が嫌」なのか「助産師という仕事が嫌」なのかを分ける
これは、転職の方向性を決める上でとても重要な問いです。
「助産師の仕事は好きだけど、今の職場の人間関係や体制が合わない」という場合、転職先を変えるだけで状況が大きく改善することがあります。一方で、「夜勤そのものが辛い」「出産に立ち会う緊張感からもう離れたい」という場合は、助産師という働き方から距離を置くことを検討してもよいかもしれません。
「職場を変えたいのか、仕事を変えたいのか」——この2つを分けて考えると、次の一歩が見えやすくなります。
✅ 「辞めたい」気持ちを整理するフロー
→ 同じ助産師として転職を検討
→ キャリアチェンジを検討する段階かも
自分でもどっちなのか、よくわからないんです。職場が嫌なのか、仕事そのものが嫌なのか…。
最初は分からなくて当然です。私も時間をかけて少しずつ整理していきました。「もし夜勤がなかったら続けたい?」と自分に問いかけてみると、ヒントが見えてくることがありますよ。
体のサインを無視していないか
「辞めたい」という気持ちが出てきたとき、体はすでにSOSを出していることがあります。以下の項目を確認してみてください。
- 休みの日も疲れが抜けない
- 眠れない、または眠りすぎてしまう
- 食欲がない、または食べ過ぎてしまう
- 仕事のことを考えると、休日でも気が重い
- 以前は楽しかったことへの興味が薄れている
これらが複数当てはまるようであれば、体と心は限界に近づいているサインかもしれません。その場合は、転職の前にまず休むことを自分に許可してほしいと思います。
誰かに話したことがあるか
「辞めたい」という気持ちは、一人で抱えていると膨らみやすいものです。信頼できる同僚、職場の外の友人、あるいは転職エージェントのカウンセラーに話してみることで、自分でも気づいていなかった気持ちが整理されることがあります。
「こんなことを言ったら心配させる」「弱いと思われそう」と思って黙っている方も多いですが、話すことは弱さではありません。むしろ、自分を客観視する第一歩です。
一人では整理しきれないときは、転職エージェントへの無料相談を活用するのも手です。「転職するかどうかまだ決めていない」という段階から受け付けており、話すだけで気持ちが整理されることがあります。守秘義務があるため、職場に知られる心配もありません。
助産師を辞めて後悔する人・満足する人の特徴
転職を考えている方が一番気になるのが「辞めた後に後悔しないか」という不安です。実際、転職後の満足度は「辞めたかどうか」よりも「どう辞めたか」に大きく左右されます。
辞めて後悔しやすい人の特徴
- 感情だけで辞める:「もう限界!」という瞬間の勢いで決めてしまう
- 次を決めずに辞める:「辞めてからゆっくり考えよう」→収入不安で焦りが生まれる
- 疲弊した状態で判断する:極度に消耗しているときの判断は冷静さを欠きやすい
- 転職先を妥協して選ぶ:早く決めたくて、条件をよく確認しないまま入社する
- 自分の価値観を整理していない:「何が嫌なのか」「何を大切にしたいのか」が言語化できていない
辞めて満足する人の特徴
- 「なぜ辞めたいのか」を言語化できている:感情ではなく、自分の価値観で判断している
- 辞めた後のビジョンがある:「次はこういう働き方をしたい」という方向性がある
- 在職中に情報収集を始めている:転職エージェントへの相談や求人チェックを先にやっている
- 助産師以外の世界を少しでも見ている:職場見学・他職種の知人と話すなど
- 休んでから判断している:まず疲れを取り、落ち着いた状態で決断している
私は8ヶ月の転職活動の末に産業保健師になりましたが、「在職中に動き始めていた」ことだけは本当によかったと思っています。辞めてから探すのと、働きながら探すのとでは、精神的な余裕がまったく違いました。
「辞めたい」という気持ちは本物でも、判断のタイミングと方法次第で、転職後の満足度は大きく変わります。
助産師の資格・経験を活かせるキャリア選択肢6つ
「助産師を辞めたい」と思ったとき、「じゃあ次はどうする?」が気になるはずです。助産師の経験や資格を活かせるキャリアは、実は思っているよりも多くあります。

1. 保健師・産業保健師(助産師の知識が活きる)
まず前提として、助産師と保健師は、それぞれ別の国家資格です。助産師だからといって、自動的に保健師資格を持っているわけではありません。ただ、看護系の大学などでは、看護師・保健師・助産師の資格を在学中にまとめて取得できるカリキュラムがある学校もあり、その結果として3つとも持っている方もいます(私自身もそのひとりです)。もし保健師資格をお持ちであれば、産業保健師や行政保健師という道が開けます。これらは夜勤なし・オンコールなしで働ける環境が多く、ワークライフバランスを重視したい方に向いています。
特に産業保健師は、助産師として培った「生活習慣・女性の健康」に関する知識が直結します。女性が多い職場や、妊娠・産後の従業員支援を行う企業では、助産師経験者が重宝される場面も多いです。
ただし、産業保健師の求人は数が限られています。私自身、産業保健師への転職活動は思った以上の長期戦になり、人気と競争の高さを身をもって感じました。保健師資格がある場合は、まず求人情報を早めにチェックし、長期戦を覚悟した上で動き始めることをおすすめします。
2. クリニック・産婦人科外来(オンコールなし)
助産師として出産を助けたい気持ちはあるけれど、夜勤やオンコールの体力的消耗がつらい——そういう方には、産婦人科クリニックの外来勤務という選択肢があります。
外来では妊婦健診のサポートや乳房ケア、育児相談などを担当するケースが多く、入院施設を持たないクリニックであれば日勤のみで働けることが多いです。助産師としての専門性を維持しながら、生活リズムを整えたい方に向いています。
3. 健診センター(助産師歓迎の案件もある)
健診センターは、日勤のみ・土日休みの職場が多く、夜勤なしで働きたい方に人気の職場です。助産師資格がある方は看護師として採用されるケースが多いですが、「助産師歓迎」と明記した求人もあります。
乳がん検診や子宮がん検診に関するサポートなど、女性の健康に関わる専門知識が活かせる場面もあります。私自身も健診センターで勤務した経験があり、生活リズムが整って体調が回復した実感がありました。
4. 助産院(規模が小さく働きやすい)
「出産に関わる仕事は続けたいけれど、大病院の体制が合わない」という方には、助産院という選択肢もあります。助産院では、フリースタイル分娩など、その施設ならではのお産に寄り添えるのも魅力です。
ただし、助産院(助産所)は法律上、扱えるのが正常分娩(低リスクのお産)に限られ、嘱託医や連携先の医療機関を定めておくことが必要です。陣痛促進剤の投与や帝王切開などの医療行為はできません。スタッフが少ない分、人間関係がシンプルになりやすく、施設の方針に共感して働けるメリットがある一方で、助産院もオンコールが発生するケースがほとんどであるため、自分が何に疲れているのかを整理した上で検討することが大切です。
5. 産後ケア施設(産褥期のお母さんを支える)
「お産そのものより、産後のお母さんと赤ちゃんに寄り添いたい」という方には、産後ケア施設(産褥施設)という選択肢があります。産後ケア事業は母子保健法に位置づけられ、市町村が取り組む事業として広がってきました。出産直後のお母さんの心身の回復を支え、授乳・育児の不安に寄り添う場所です。
産後ケア施設には、宿泊型・日帰り型・訪問型といった形があるといわれています。なかでも宿泊型は、産後のお母さんと赤ちゃんが一緒に泊まり込んで、ゆっくり休みながら授乳や育児のサポートを受けられる施設で、「産後ケアセンター」「産後ケアホテル」などと呼ばれることもあります。出産でくたくたになったお母さんが、心と体を休められる場所です。
こうした施設では、助産師として培った乳房ケア・授乳指導・育児相談の経験がそのまま強みになります。お産の現場のような緊張感の高い夜勤が中心ではなく、日帰り型や訪問型であれば日勤中心で働ける職場もあります。「出産には関われなくなるけれど、母子に寄り添う仕事は続けたい」という方に向いている選択肢です。
6. 看護師として病院以外で働く
助産師の方は看護師免許も併せて持っているため、「看護師」として働くことも当然できます。訪問看護、デイサービス、企業の医務室、学校の養護教諭サポートなど、夜勤なし・オンコールなしで働ける職場は多岐にわたります。
「助産師を辞める=看護の現場を離れる」ではありません。看護師として新しい環境で働き始めながら、次のキャリアを模索することも十分に可能です。私自身もこのルートを通りましたが、視野が大きく広がった時期でした。助産師から看護師への具体的な転職事情は、こちらの記事で求人倍率や年収の比較データとあわせて解説しています。
助産師から転職するときに気をつけること
転職を決めたとき、または検討しているとき、事前に知っておくと役立つポイントをまとめます。
助産師免許を「休ませる」ことへの葛藤と向き合い方
転職を考えるとき、多くの方が「せっかく取った助産師免許を使わなくなっていいのか」という葛藤を感じます。免許取得まで何年も努力してきた分、それを手放すような感覚になるのは自然なことです。
「今の自分に合った働き方を選ぶこと」と「助産師免許を持ち続けること」は、矛盾しません。免許に縛られて、自分の人生を縮めなくていい と、私は思います。
転職活動で「助産師経験」をどう活かすか
転職活動の際、職務経歴書や面接でどう助産師経験をアピールするかは大切なポイントです。
単に「助産師として5年勤務しました」と書くだけでなく、何を学び、何ができるようになったかを具体的に伝えることが重要です。たとえば、
- 産婦の精神的サポート・傾聴の経験
- 多職種連携(医師・新生児科・社会福祉士など)でのコーディネート経験
- 緊急時の迅速な判断・対応経験
- 育児支援・母乳指導など、生活に根ざした保健指導の経験
こうしたスキルは、保健師・産業保健師・訪問看護など、さまざまな分野で評価されます。
「キャリアが途切れ途切れ」と言われたときの対処法
これは私が実際に転職活動中に経験したことですが、複数の職場を経験していると、「一貫性がない」と見られることがあります。
大切なのは、自分なりのキャリアの「軸」を言語化しておくことです。私の場合は「人の健康と生活を支えるという一貫したテーマがある」という軸を見つけました。助産師も、看護師も、応援ナースも、産業保健師も、訪問看護師も——すべて「人の健康と生活に向き合う」という点でつながっていたのです。
もし「途切れ途切れですね」と言われても、あなたのキャリアに意味がないわけではありません。それを見抜けない面接官の会社と縁がなかっただけ、と私は今では思えます。自分の経歴をしっかり肯定できるように、事前に言語化しておくことをおすすめします。
「途切れ途切れ」じゃなくて、「いろんな現場を知っている」と言い換えてもいいのかもしれませんね。
まさにそうなんです。同じ経歴でも、伝え方ひとつで強みに変わります。あなたの歩んできた道は、あなたにしか語れない財産ですよ。
助産師を辞めた私がたどったキャリア(実体験)
ここからは、私自身の話をします。少し長くなりますが、遠回りしてきた私のリアルを、包み隠さずお伝えしたいと思います。まずは、私がたどってきた道のりをひと目で。
5年目に感じた「このままでいいのか」という問い
助産師として病棟で5年間働いた頃、私は燃え尽きとは少し違う、でも確かな「違和感」を感じていました。仕事が嫌いになったわけではない。でも、このまま10年、20年と続けていく自分が全くイメージできなかった。
夜勤の度に体がきつくなっていくのを感じながら、「私はこれからどうなりたいのだろう」という問いが、ずっと頭から離れませんでした。助産師として経験を積んできた。辞めたら、その努力は無駄になるのだろうか——そんな不安もありました。
でも結局、私は辞めることを選びました。
看護師→オーストラリア→応援ナース→産業保健師、そして訪問看護師へ
助産師を辞めた後、最初はHCU(高度治療室)の看護師として転職しました。助産師の経験はあっても、一般看護師としての経験はほとんどなかったため、最初はゼロからのスタートに近い感覚でした。このときの葛藤や、助産師から看護師へキャリアチェンジする現実については、助産師を辞めて看護師へ。私がキャリアチェンジを選んだ理由で求人データも交えて詳しく書いています。
その後、ワーキングホリデービザでオーストラリアへ渡りました。帰国後は、応援ナース(期間限定で各地の施設を支援する働き方)として働いた時期もありました。さまざまな職場を経験する中で、「もっと予防や健康管理に関わる仕事がしたい」という思いが固まっていき、やがて産業保健師としての道に進みました。そして現在は、訪問看護師として、利用者さんお一人おひとりの暮らしに寄り添っています。遠回りに見える道のりでしたが、最終的に「その人がその人らしく生きることを支えたい」という、自分の軸にたどり着けたと感じています。
「キャリアが途切れ途切れ」と言われた転職活動のリアル
産業保健師を目指して転職活動を始めたとき、私は30社以上に応募し、8ヶ月間活動を続けました。
その過程で、転職エージェントから言われた言葉が今も忘れられません。「キャリアが途切れ途切れですね。何がしたいのか分かりません」と。
助産師から看護師へ、オーストラリアへ、応援ナースへ——確かに、一本道ではない経歴です。その言葉を聞いたとき、正直、かなり傷つきました。自分が積み上げてきたものを、否定されたような気持ちになりました。
でも、振り返ってみると、その「途切れ途切れ」に見えるキャリアの一つひとつが、産業保健師を経て訪問看護師としての今の自分をつくっています。オーストラリアでのワーキングホリデーも含め、さまざまな経験を経たからこそ、多様な背景を持つ方への生活を支える関わりに幅が出せていると感じています。
「遠回りしてきた分だけ、見えるものがある」——今の私は、そう思っています。
助産師の経験は、宝だったと今は思う
助産師から看護師や保健師として働き始めて、改めて気づいたことがあります。助産師として培った「患者さんの話をじっくり聞く力」「観察眼」「緊急時の落ち着いた対応力」は、どのような現場でも確実に活きています。
妊娠・出産・育児に関する知識は、働く女性の健康支援において特に強みになっています。「助産師さんだったんですね」と言われると、一瞬で信頼関係が深まることもあります。
あのとき「辞めたい」と思って、実際に辞めてよかった、と今は思っています。あの選択が、今の自分につながっているからです。
転職を動き出すなら使ってほしいサービス
「転職を考え始めた」という段階から、プロのサポートを活用することで、動きやすくなります。私自身、産業保健師を目指したときは30社以上に応募し、8ヶ月以上の転職活動になりました。今振り返ると、ひとりで抱え込まずに早めにプロへ相談していれば、もっと気持ちもラクに進められたと思います。ここでは私がおすすめする3つのサービスを紹介します。なお、ここで紹介するサービスは、すべて登録・利用が無料です。
✅ 面接対策・書類添削あり
✅ 専任アドバイザーが対応
✅ 助産師からの転職事例が豊富
✅ 相談だけでもOK
✅ 医療系エージェントと掛け持ち推奨
✅ 求人数が業界最大級
マイナビ看護師
助産師求人・看護師求人の両方を幅広く扱っている転職サービスです。助産師から別の職種へのキャリアチェンジを考えている方も、専任のアドバイザーが希望に合った求人を一緒に探してくれます。面接対策や職務経歴書の添削サポートもあり、転職が初めての方でも安心して使えます。
ナース人材バンク
看護師・助産師に特化した転職サービスで、無料で利用できます。助産師からの転職事例も豊富で、「今の状況を相談したい」という段階から気軽に問い合わせることができます。担当者が丁寧にヒアリングしてくれるため、「何から始めればいいかわからない」という方にも向いています。
doda(一般転職エージェント)
産業保健師など、企業勤務を目指す場合は、医療系に特化した転職サービスだけでなく、一般の転職エージェントも活用することをおすすめします。dodaは求人数が多く、企業の産業保健師・企業内看護師などの求人も扱っています。医療系と一般系、両方を掛け持ちして使うのが、求人の取りこぼしを防ぐコツ です。
よくある質問
Q1. 助産師を辞めたら、資格はどうなりますか?
A. 退職しても、看護師・助産師(保健師をお持ちの方は保健師も)の免許はそのまま手元に残ります。
免許は、職場を辞めたからといって失われるものではありません。ですから「資格を手放すかどうか」を悩む必要はなく、本当に考えるべきは「その資格を使って、次にどんな分野で働くか」です。助産師として働き続けることも、看護師や保健師として別の道に進むことも、いつでも選び直せます。今の職場を離れても、あなたが積み上げてきた資格と経験は、これからもずっとあなたのものです。
Q2. 助産師から産業保健や企業の健康管理の仕事に転職できますか?
A. はい、できます。「保健師」資格がなくても、産業保健の現場で働く道があります。
まず整理すると、「保健師」という職種で働くには保健師国家資格が必要です。一方で、企業には看護師資格で就ける「産業看護職(企業内看護師)」というポジションもあります。つまり、保健師資格がなくても、産業保健の分野で働く道はあります。
ただし、職場によって採用条件は大きく異なります。私自身は保健師資格を活かして労働衛生機関の産業保健師になりましたが、その機関では保健師資格が前提で、働いていたのは全員が保健師でした。一方、一般企業の医務室や健康管理室では、看護師資格で働いている方もいます。「保健師」職に限定して応募するのか、看護師資格でも就ける産業看護職を狙うのかで、応募できる求人が変わってきます。自分の資格でどの求人に応募できるかを、早めに確認しておくと安心です。
Q3. 転職後に「辞めなければよかった」と後悔しませんか?
A. 全く後悔がないとは言い切れませんが、辞めてよかったと今は感じています。
私も転職直後は「本当によかったのだろうか」と不安になることがありました。でも、時間が経つにつれ、新しい職場で積み上げてきた経験が確実に自分を豊かにしていると感じています。後悔するかどうかは、最終的には「辞めた後にどれだけ自分が動けるか」にかかっている部分が大きいと思います。辞めることよりも、辞めた後の自分をどう生きるかを考えることの方が大切です。
Q4. 助産師経験は他の職場で評価されますか?
A. はい、評価される場面は多くあります。
「助産師=出産の場でしか活かせない」と思いがちですが、そうではありません。傾聴力・観察力・多職種連携の経験・女性の健康に関する知識は、訪問看護・産業保健・地域包括ケアなどの分野で広く評価されます。特に女性が多い職場や、女性の健康支援を重視する企業では、助産師経験は大きな強みになります。自分の経験を「使えるスキル」として言語化することが重要です。
Q5. ブランクがあっても、また助産師に戻れますか?
A. はい、戻ることは可能です。ただし不安があれば、復帰支援の仕組みを活用すると安心です。
免許は失効しないため、何年か現場を離れていても、助産師として再び働くこと自体はできます。一方で、「分娩から長く離れていて、手技を忘れていないか不安」という声が多いのも事実です。そうした方のために、各地の看護協会などでは復職を支援する研修(実技の復習や最新知識のアップデートなど)が用意されていることがあります。いきなり分娩の多い大病院に戻るのではなく、健診業務や外来など、段階的に勘を取り戻せる職場から再開するのもひとつの方法です。一度離れたからといって、助産師の道が閉ざされるわけではありません。
まとめ
「助産師を辞めたい」と感じたとき、それはあなたが弱いのではありません。それだけ真剣に仕事と向き合ってきた証拠だと、私は思います。
助産師という仕事には、他の職種にはない深いやりがいがあります。同時に、その重さは他の職種には想像しにくいほどのものがあります。「辞めたい」という気持ちは、正直なSOSであり、新しいキャリアを考え始めるサインでもあります。
私自身、5年間助産師を続けた後に転職し、看護師・応援ナース・産業保健師・訪問看護師と、遠回りに見えるルートをたどってきました。転職活動中に「キャリアが途切れ途切れ」と言われ、傷ついたこともありました。でも今は、その全てが今の自分をつくっていると感じています。
あなたの経験は、決して無駄にはなりません 。遠回りしても、助産師として積み上げてきたものは、どこへ行っても必ず活きます。
まずは一歩、情報を集めることから始めてみてください。転職エージェントへの無料相談だけでも、気持ちが軽くなることがあります。あなたのキャリアの次のページを、一緒に開いていきましょう。
関連記事
【出典・参考文献】
本記事は、筆者自身の体験に加え、以下の公的資料・公開情報に基づいています(最終閲覧日:2026年6月6日)。
- 厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei24/index.html
- 医療法(助産所の定義・入所数の上限・嘱託医師に関する規定) https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000205
- 保健師助産師看護師法(免許・業務従事者届に関する規定) https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000203
- 公益社団法人 日本看護協会(都道府県ナースセンター・復職支援研修) https://www.nurse.or.jp/
- 中央ナースセンター「離職中の看護職の皆様の復職をサポート」(復職支援) https://www.nurse-center.net/nccs/unemployed/index.html
- 厚生労働省「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(就業助産師数) https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/22/
※本記事は筆者の個人的な体験と公開情報に基づくものであり、特定の進路を推奨・否定するものではありません。働き方や求人の状況は時期・地域・施設によって異なります。
